不整脈検査・治療
不整脈とは
いろいろある心臓病の中で、心臓の拍動(脈)が速くなったり、遅くなったりして“脈がみだれる”状態を不整脈(ふせいみゃく)と呼びます。一般には原因が分からない特発性の不整脈が最も多いと考えられますが、原因としては、狭心症や心筋梗塞など心筋への血流が障害される虚血性心疾患、心筋細胞自体の異常である心筋症、弁膜症や高血圧などが挙げられます。
心臓以外の疾患では甲状腺機能亢進による心房細動が一般的ですが、アルコールやストレスも一過性に不整脈の原因になると考えられています。その他、薬の副作用や、電解質異常も原因となりえます。
不整脈の検査
以下の検査を行い、不整脈の診断、重症度の判定を行い、治療方針を決定します。
これらの検査を順序立てて行いますが、診断が明瞭で症状が重い場合は、早くから治療を優先する場合があります。
不整脈カテーテル検査、心臓カテーテル検査・冠動脈造影・心筋組織生検などは入院して検査します。
不整脈の診断および重症度の判定に行う
- 心電図
- 24時間心電図(ホルター心電図)
- 不整脈カテーテル検査(EPS)
- 携帯型心電図
原因を調べるための検査
- 心臓カテーテル検査・冠動脈造影・心筋組織生検
- 心臓MRI検査
- 心臓超音波検査
- 心臓CT検査
- 心臓核医学検査
不整脈の種類
不整脈には大きく分けて2種類ありますが、2種類がほぼ同時に起こることもあります。
また、治療は、不整脈の種類・程度により様々な治療法から選択しますが、各治療法を併用することも多いです。
1徐脈性不整脈
徐脈性不整脈とは
“脈が異常に遅くなる”ものを徐脈(じょみゃく)性不整脈と言います。徐脈性不整脈には大きく分けて、脈を作る洞結節に異常が起こる洞結節機能不全症候群、心房から心室への伝導が障害される房室ブロックがあります。
徐脈性不整脈の症状
徐脈性不整脈では脈が遅いことによる、徐脈、息切れ、疲労感、動悸などが多く、程度が重い場合はめまいや失神、心不全などが起こります。重症の場合は緊急で医療機関への受診が必要です。また、不整脈には徐脈と頻脈の両方が起こる場合があり、症状は両方が見られます。なお、不整脈があっても全く自覚症状がなく、関連する病気で始めて不整脈が見つかる方もおられます(無症候性心房細動による脳梗塞)。健康診断などで不整脈が見つかる方もいらっしゃいます。
種類別の治療方法
2頻脈性不整脈
頻脈性不整脈とは
“脈が異常に速くなるもの”を頻脈(ひんみゃく)性不整脈と言います。頻脈性不整脈には、心臓の鼓動が正常のタイミングより早く起こる期外収縮、期外収縮が連発する頻拍症があり、それぞれ心房で起こる上室性不整脈と心室で起こる心室性不整脈に分けられます。
頻脈性不整脈の症状
頻脈性不整脈では脈拍欠滞、頻脈、動悸、胸部違和感などが多く、程度が強いと血圧低下によるめまい、脱力感、胸痛などが起こり、重症の方はショック、失神、心不全、心停止などが起こります。また、不整脈には徐脈と頻脈の両方が起こる場合があり、症状は両方が見られます。なお、不整脈があっても全く自覚症状がなく、関連する病気で始めて不整脈が見つかる方もおられます(無症候性心房細動による脳梗塞)。健康診断などで不整脈が見つかる方もいらっしゃいます。
種類別の治療方法
当院の取り組み
昭和大学藤が丘病院循環器内科では下記のような限定施設で使用可能な新しいデバイスを積極的に植込みしております。
植込み型心臓モニター(ILR)
画像提供:日本メドトロニック株式会社
脳全体に十分な血液が供給されなくなったために一時的に意識を失うものを「失神」と呼びます。中でも心臓を原因とした失神(不整脈や弁膜症など)は早期の診断と治療を必要とします。しかし、病院を受診された時には意識は完全に回復し、各種検査を行っても原因が分からないことがしばしばあります。一般的に、このような失神の原因がわからない方では、24時間のホルター心電図で心拍のモニタリングを行い、不整脈の検出を行っております。
しかし、ILR (implantable loop recorder)は、機器を胸の皮膚の下に植込みすることになりますが、最長3年間、心臓のリズムを常時モニタリングし、不整脈や失神した時の心電図を記録することが出来ます。不整脈の検出にはこのILR植込みが優れていることが分かっております。
- 手術の手順
- ILRは手のひらに入るほどの小さなスティック状をしています。胸の皮膚を1cmほど切開し、機器を皮膚の下に挿入します。手術時間は30分程度と短く、危険性は低い手術です。
- 手術後
- 手術後は数時間の安静の後すぐに歩行可能です。
※このデバイスは施設限定ではありません。
皮下植込み型植込み型除細動器(S-ICD)
画像提供:ボストンサイエンティフィックジャパン
不整脈とよばれる不規則で異常な心拍が起こることがあり、その中には心室細動のような致命的なものがあります。植込み型除細動器(ICD;implantable cardioverter defibrillator)は、このような不整脈の発生時に心臓に電気ショック(除細動)を送り、正常な心拍に戻すことで心臓のリズムを正しく戻します。
従来の経静脈ICDの植込み手術は血管内でリードを操作し、心腔内(右心室)にコイル付きリードを留置する方法ですが、最近になり心腔内にはリードを留置せず皮下にのみリードを植込みするタイプのICDが日本で可能になりました。(従来の経静脈ICDの植込みついてはICDの項を参考にして下さい。)
皮下植込み型除細動器(S-ICD; subcutaneous ICD)は、脇の下の皮下に植え込まれた本体と前胸部(胸骨左縁又は右縁)の皮下に植え込まれたコイル付きリードを使って、電気ショックを行います。このシステムでは、リードは心臓や血管に触れないため、経静脈ICDに比べて植込み手術及び術後の合併症が軽度で発生率が低いという利点があります。しかし、電池寿命は変わりませんが、通常より本体が大きいという欠点があります。
- 手術の手順
- 手術前日までにS-ICDに適切な心電図が計測できるかチェック致します。手術当日は局所麻酔を使用します。痛みの強い場合は全身麻酔薬を適宜使用します。まず脇の下(腋窩線)を切開し、本体を入れるためのポケットを作成します。胸骨の左縁(又は右縁)に2か所小さな切込みを入れリードを固定します。切開した皮膚を閉じて手術は終了です。
- 手術後
- 手術当日はベッド上安静が必要ですが、数時間後から翌日には歩行が可能です。経静脈ICDと異なり上肢の可動制限はありません。
リードレスペースメーカー
画像提供:ボストンサイエンティフィックジャパン
規則正しい心臓のリズムが乱れてしまう状態を不整脈といいますが、中でも脈が極端に遅くなる徐脈の状態では、めまいやふらつき、失神の原因となります。徐脈になる不整脈として、洞結節の機能が低下した洞不全症候群や房室結節の機能が低下した房室ブロックがあります。このような不整脈の方には症状の出現を予防する治療法としてペースメーカー植込み術があります。
従来のリード付きペースメーカーは通常、左の鎖骨の下に皮下ポケットを作り、本体を固定し、鎖骨の下の静脈を通して心腔内(右心室、右心房)へリードという導線を通し固定します。
リードレスペースメーカーは、小さなカプセル型をしております。このカプセル型の機器を直接右心室の中に固定します。この機器から出た電気信号は心臓へ直接伝わり、心拍を補足します。従来のリード付きペースメーカーに比べて合併症が少ないという利点がありますが、一方で病気よっては従来のペースメーカーに比べて電池寿命が短いという欠点があります。